News経済産業省、物流改善に向けた3つの実証実験の成果報告

需要予測活用で特売時の追加発注58%削減など製配販の物流負荷軽減

株式会社シノプス(本社:大阪府大阪市、代表取締役:南谷 洋志、以下「シノプス」)は、経済産業省が有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」)に委託している事業「令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(販促商品等のリードタイムの延長、物流レジリエンスの向上に向けた小売業の在庫管理・発注業務のDX)」において、トーマツからの再委託により、フィジカルインターネットのロードマップ・アクションプランに基づき、販促等のリードタイムの延長・レジリエンスの向上に向けた需要予測技術による在庫管理・発注業務DX実証を行いました。本実証実験では、需要予測型自動発注サービス「sinops-CLOUD」の需要予測を活用し、サプライチェーンの起点となる小売において、欠品を防ぎつつ追加発注を58%削減することで、適正なリードタイムを確保でき、物流の効率化が一定程度見込めるなどの効果を確認できました。

背景

トラックドライバーの時間外労働時間の上限が規制される2024年問題を乗り越え、将来的にフィジカルインターネットを実現し、国民生活や地域経済に不可欠な物流機能を維持するためには、消費財のサプライチェーン全体の最適化が急務となっています。そのためには、メーカー・物流・卸を含む消費財のサプライチェーンの起点となる小売業の発注・在庫管理について、DXツールも活用した業務改革を進めていくことが鍵となります。

実証実験について

現状、消費財物流の非効率につながっている、販促のリードタイム等の課題に着目し、需要予測型自動発注サービス「sinops-CLOUD」の導入による効果について、3つの実証実験を行いました。

 

【実証実験1】新商品・販促商品に係る発注適正化(リードタイムの延長等)

小売業において、通常の商品は需要予測ツールが広く利用されていますが、新商品や販促商品においては販売予測がむずかしいため、販促期間中、小売業からの緊急で通常より短いリードタイムでの追加発注が発生し、計画外の配送を行うといった非効率な物流が発生しています。また、そういった小売業の要望に応えるため、卸売業でも過剰な在庫確保など、物流センター内業務の生産性低下といった問題を引き起こしています。そこで、従来は直前までおこなわれていた販促初週の人による追加発注分も考慮した上で需要を予測し、早期(14日前)に発注量を確定させ、卸と需要予測に基づく適正な在庫量を連携する実証実験を行いました。

・ 協力事業者

生活協同組合コープさっぽろ(以下、コープさっぽろ)、北海道ロジサービス株式会社、加藤産業株式会社
 実証実験の実施協力
 実証実験に必要なデータの提供

・ 実施概要

実施場所: コープさっぽろ25店舗(札幌東地区)
実施期間: 2024年1月24日~2024年3月5日
対象商品: 新商品・販促商品48SKU *1

     *1: 商品を管理する際の最小単位

・ 本実証実験の結果
 【効果1】

     *2:23/10/17~23/11/28
     *3:24/1/21~24/3/5

sinops‐CLOUDの需要予測を使った場合、リードタイムが2週間以内の追加発注の割合が従前より58%削減しました。また、需要予測を使用した店舗の方が、未使用店舗よりも欠品率が低く、残在庫日数も同程度でした。

 【効果2】

     *4:物流センター在庫実績値(2024/1/22~1/29)
     *5:sinops-CLOUDの需要予測を活用した場合の推計値

sinops‐CLOUDの需要予測を使ったシミュレーションと、実際の販促期間の卸の平均在庫数を比較したところ、需要予測を使った場合には、販促期間中の18SKUあたりの卸在庫は2,274ケースから1,573ケースへ30.8%圧縮できることが推計されました。需要予測を活用し、追加発注を削減することは店舗・卸のみならず、メーカーも含めた物流の非効率解消にもつながると期待されます。

 

 

【実証実験2】店舗配送量の曜日平準化

一般的に、店舗の売上は曜日によって大きく異なるため、店舗の発注量、納品量も曜日によって大きくばらつきます。その結果、店舗の陳列作業や配送業務、物流センター業務の効率悪化に繋がっていました。
そこで、販促納品分を加味したうえで、直近7日間の需要予測を活用し、賞味期限日数や定番棚のキャパシティを考慮、極力曜日ごとの納品量が一定になるような発注数の起案を実施しました。

・ 協力事業者

生活協同組合コープさっぽろ、北海道ロジサービス株式会社
 ・ 実証実験の実施協力
 ・ 実証実験に必要なデータの提供

・ 実施概要

実施場所: コープさっぽろ26店舗(札幌東地区、日配は17店舗)
実施期間: 2023年11月13日~2024年3月24日
対象商品: 食品・菓子・日配・日用品カテゴリ全商品

・ 本実証実験の結果
 【効果1】

     *6:2024/1/15~1/21
     *7:2024/1/23~2/11の平均
     *8:2024/2/5~2/11
     *9:2024/2/12~3/3の平均

需要予測を使って店舗納品量を曜日平準化した結果、納品量のばらつき *10が日配以外では1店舗/1週あたり86%から28%に抑制、日配では1店舗/1週あたり122%から21%に大幅に抑制され、かつ欠品率が減少し、ロス率も従前と同程度でした。

     *10:納品量が最大の曜日と最小の曜日の差

 【効果2】

     *11:2024/1/15~1/21、ただし二十四軒店の菓子のみ2023/11/6~11/11
     *12:2024/2/12~3/3の平均

店舗納品量を平準化したことで、店舗での商品陳列工数が1店舗/1カテゴリ/1週あたり32.5人時から20.0人時に38%削減されました。これは、1店舗/1年あたり652,600円のコスト *13に相当します。
納品量が平準化されることで、作業時間がどの曜日もある程度平準化されたため、空き時間や時間外労働が削減され人時生産性が向上したと考えられます。

     *13:北海道の運搬・清掃・包装の職業の求人賃金1,004円(R5年11月時点)
       北海道労働局HP(https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/jirei_toukei/kyujin_kyushoku/toukei/chingin.html
       よりトーマツ算出

 【効果3】

需要予測を使って店舗納品量を曜日平準化した実績値をもとに、配送トラックの調達計画を検討した結果、物量によって増便していた配送トラックの台数が1地区 *14/1月あたり64台から39台に39%削減できると推計されました。これは、1年あたり1,050万円のコスト、11,061㎏のCO2排出量の削減に相当します。

     *14:石狩地区

 【効果4】

全店舗・全カテゴリで店舗納品量を曜日平準化し、都度運んでいた納品アイテム数を集約することで、一日あたりの納品SKU数を削減しました。結果、物流センターの人員稼働の計画上、物量によって増やしている人時が全センター/1年あたり473,782人時から450,092人時に5%削減できると推計されました。これは、4,181万円のコスト *15に相当します。

     *15:北海道の倉庫作業員の職業の求人賃金1,059円(R5年11月時点)
      北海道労働局HP(https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/jirei_toukei/kyujin_kyushoku/toukei/chingin.html)
      よりトーマツ算出

 

 

【実証実験3】気象予報情報の活用によるレジリエンス向上

気象災害時には、災害前の買いだめにより、店舗では欠品が多く生じ、直後の大量発注のために物流が非効率になることがあります。これを防止するため、高速道路の通行止めなど通常通り配送が行えないなどの物流の混乱が見込まれる場合に、気象予報情報等を需要予測に連携させ活用することにより、災害前後の発注量を最適化する取組みを行いました。

協力事業者

 株式会社ウオロク(以下、ウオロク)、株式会社ロジスティクス・ネットワーク
  ・ 実証実験の実施協力
  ・ 実証実験に必要なデータの提供

実施概要①

 実施内容: 大雪前の店舗在庫の積み増し
 実施場所: ウオロク6店舗(魚沼、柏崎、新津、長岡、コモ、村上)
 実施期間: 2023年12月16日
 対象商品: 大雪時の売れ筋カテゴリ(即席めん、レトルトカレー、パスタ、カイロ等)の全商品

実施概要②

 実施内容: 大雪による物流混乱後の発注上限値設定(机上実験)
 実施場所: ウオロク全店舗
 対象商品: 食品、菓子、酒、住居カテゴリの全商品

本実証実験の結果
 【効果1】

大雪予報発令時に大雪時の売れ筋カテゴリの発注値を事前にsinops‐CLOUDの需要予測上で引き上げました。その結果、実証対象店舗では、対象外店舗よりも大雪時の欠品商品数が19%抑制され、売上が伸びました。

     *16:大雪時(2023/12/19~12/25)の欠品商品数の平常時(2023/12/5~12/11)に対する割合
     *17:売上の平常時( 2023/12/5~12/11 )同曜日に対する割合

 【効果2】

大雪による物流混乱後、店舗からの過剰発注で物流センターの取扱可能量を超え、未入庫数の激増等のキャパシティオーバーの事態を防ぐため、発注値の上限(平常時の1.3倍)を設定する机上検証を行いました。

物流混乱後でも、物流センターにおける人・物・場所の不足が軽減され、生産性が平常時と同程度まで高まることで、必要人時が9,963人時から8,687人時/13日 *18 に13%削減すると推計されました。これはコストにすると1,695,620円/13日に相当します。また、sinops‐CLOUDで店舗在庫の少ない商品を優先的かつ、自動で発注を行うことで、欠品商品数が物流混乱なしの大雪時 *19と同程度まで抑制され、45店舗合計で5,682SKUから2,448SKUに削減すると推計されました。

     *18:2022年大雪災害時に実際に物流センターで生じた混乱日数
     *19:2023/12/19~12/25

 

生活協同組合コープさっぽろについて

1965年創立。北海道内に108店舗の運営や宅配システムトドックを通して、200万人の組合員さんに安全・安心な商品を提供しています。少子高齢化や過疎化など北海道が抱える課題に対して、「つなぐ」を合言葉に子育て、環境や福祉など、組合員さんのための多彩な事業や活動を行っています。

株式会社ウオロクについて

ウオロクは江戸時代から鮮魚商を営み、商いの基本は「真心」と「感謝のこころ」を大切にすることと考え昭和37年にはスーパーマーケットを開業しました。現在は新潟県内で40店舗を超えるまでに至り、単に物を商うという考えだけではなく、お客様に「おいしく楽しい食卓と豊かな生活を提供すること」を自らの使命ととらえています。

株式会社シノプスについて

株式会社シノプスは、「世界中の無駄を10%削減する」をビジョンに掲げ、需要予測型自動発注サービス「sinops」(シノプス)を開発・販売しているソフトウェアメーカーです。日配食品や惣菜といった賞味期限が短く需要予測がむずかしいとされるカテゴリのシステム化に成功。多くの食品小売企業に採用いただいております。在庫に関わる人、もの、金、時間、情報を最適化するITソリューションを提供し、限りある資源を有効活用することで、広く社会に貢献していきます。東証グロース上場(証券コード:4428)。

参考資料

2024年1月12日プレスリリース「経済産業省の物流改善に向けた小売業の在庫管理・発注業務DXの実証実験
2024年2月14日プレスリリース「経済産業省の物流改善に向けた実証実験需要予測活用で配送トラック年間300台削減などの可能性を示唆
「sinops-CLOUD」製品サイト:https://www.cloud.sinops.jp